児童虐待と子どもの
貧困の現状
近年、虐待によって亡くなったお子さんのニュースをよく目にします。
「かわいそうに…」
「なんでこんなひどいこと…」
やるせない気持ちになる方は多いと思います。
1年の間に虐待が原因で命を落としてしまう子供たち
日々虐待を受け、死と隣り合わせの中でかろうじて生きている子供たち
虐待が原因で親元を離れ児童養護施設で暮らしている子供たち
私たちはこの現実に対して、見て見ぬふりをしていていいのでしょうか。
児童虐待とは
- 身体的虐待
- ・殴る
- ・蹴る
- ・叩く
- ・投げ落とす
- ・激しく揺さぶる
- ・やけどを負わせる
- ・溺れさせる
- など
- 性的虐待
- ・子どもへの性的行為
- ・性的行為を見せる
- ・ポルノグラフィの被写体にする
- など
- ネグレクト
- ・家に閉じ込める
- ・食事を与えない
- ・ひどく不潔にする
- ・自動車の中に放置する
- ・重い病気になっても
病院に連れて行かない - など
- 心理的虐待
- ・言葉による脅し
- ・無視
- ・きょうだい間での差別的扱い
- ・子供の目の前で家族に対して
暴力をふるう(DV) - など
児童虐待の現状
児童相談所が対応した
児童虐待相談件数
205,044件
これは2020年度に児童相談所が対応した児童虐待相談件数です。
2000年に児童虐待防止法が施行されてから、相談件数は毎年増加しています。
相談窓口ができたことで、今まで明るみに出なかった虐待の相談が増えたという見方ももちろんできますが、ここ数年は右肩上がりで増加しています。
特に増加しているのは心理的虐待やネグレクトなど「目に見えない」虐待です。
この背景には、核家族化や共働きに加え、ひとり親世帯の増加も要因として挙げられます。
社会の疲弊と不満が、罪のない子どもにぶつけられているのです。
虐待により死亡した子どもの数
78名
これは2019年4月から2020年3月までに虐待死した子どもの数です。
私たちが何気なく過ごしている一週間の間に、一人以上の子どもが虐待により亡くなっています。
さらに虐待死した子どものうち3歳以下が59.7%、0歳以下がもっとも多く49.1%を占めています。
自分で自分を守る術を知らない小さな子どもたちが犠牲になっているのです。
実の親による虐待の割合
88.9%
令和元年度中に児童相談所が対応した養護相談のうち、実の父親と母親による虐待の割合です。
主な虐待者別構成割合をみると「実母」が47.7%と最も多く、次いで「実父」が41.2%となっており、「実父」の構成割合は年々上昇しています。
親も様々な理由で追い詰められ、精神的にも経済的にも限界を通り過ぎ、やり場のない怒りとやるせなさを抱えながら、
結果として自分でも望まぬうちに子どもに矛先を向けてしまうのかもしれません。
虐待を受け児童養護施設に入る子どもの数
10人に1人
虐待の通報を受けた児童相談所は危険性があると判断した場合、一時保護という形で子どもを預かります。
ある児童相談所の職員さんにお聞きした話によると、一時保護されてから児童養護施設に移る子どもは約10人中1人です。
残りの9人はこのまま親と暮らしたらこの子は死んでしまうかもしれないと思いながら、家に帰さざるをえません。
虐待の相談件数が増加しているだけでなく、児童養護施設のキャパシティーもオーバーしている現状があります。
また、施設に行くことを望まない子どももいます。子ども達の多くは虐待をされていてもなお実のお父さん・お母さんのそばにいることを望むのです。
私たちが考えなければならないのは、果たして虐待は当事者だけの問題なのか?ということです。
虐待の加害者である親を罰すれば解決するのでしょうか?
虐待をするような親と離れることができれば子どもはそれだけで幸せなのでしょうか?
周囲にいる私たちが、すぐ近くで起こっているかもしれない虐待という問題に目を向け、
虐待のない社会を作るために一歩踏み出す必要があるとみらいこども財団は考えています。
虐待を受けて苦しむ子どもや、
虐待をしてしまって苦しむお母さんやお父さんをなくすために、
周囲にいる私たちができることを一緒に考えませんか?
日本において急速に
増加している貧困問題
国が定義している貧困家庭とは1人当たりの年間生活費が127万円です。127万円と聞くと「それがはたして貧困といえるのか」という疑問がわくと思います。これは、あくまでも定義であり、127万円以下で生活している人をさしています。
(※ 2018(平成 30)年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は 127 万円となっており、「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は 15.4%となっている。)
貧困家庭に暮らしている子ども
7人に1人
子ども(17 歳以下)の貧困率は 13.5%となっており、7人に1人が貧困家庭に暮らしているという状況です。国民生活基礎調査は厚生労働省が3年ごとに発表しており、主に先進国でつくる経済協力開発機構(OECD)が発表している平均は12・8%(17年)となり、13.5%という数値は国際的にも高い水準です。
主要7カ国(G7)でも貧困率の低い順から5番目となります。OECDが2015年に改定した新基準でみると、日本の子どもの貧困率は14・0%となります。
ひとり親世帯の貧困率
48.3%
私の実感では一人当たり年間の生活費が50万円以下で暮らしている子供たちが多いような気がしています。
例えばシングルマザーと幼い子供が2人いる合計3人の家族なら年間「150万円」以下で生活をしている家庭がほとんどではないかと思います。
ひとり親世帯の貧困率はなんと「 48.3%」ほとんど2人に1人の子どもが貧困で苦しんでいます。
貧困が見えない時代
核家族が増加
今は貧困が「見えない時代」と言われています。
その理由の1つに昔に比べて親子だけで暮らしている核家族増えていることがあげられます。核家族が増えることで隣近所との関係が薄くなり、祖父母との距離も遠くなることで家庭内の状況が見えにくく、お互い助け合うことが難しい状況になっています。
子どもの服装や持ち物で判断できない
もう1つは子どもの服装や持ち物だけでは判断が難しくなっているという状況があります。洋服や小物なども平均的に安くなっておりお金がない家庭でもファストファッションを購入することができます。よって見かけだけでは判断ができません。
離婚の増加と養育費の問題
現在日本の離婚率は33%と高く、数年内には40%に達すると予想されています。
離婚をして幼い子どもたちを引き取って育てることになるのは約90%が女性です。
最初は養育費を毎月支払う男性が数年後にはまったく支払わないというケースが多発しています。
日本社会では女性が幼い子供を抱えて、正社員として雇用される機会がほとんどなく、多くの女性はパート・アルバイトで生活を支えることになります。これは日本の大きな社会課題です。
低賃金のパートだけで生活を支えるのには限界があり、ここから貧困がはじまるのです。
そして、児童虐待へとつながることになります。
貧困から虐待へ
多くのお母さんは子どもたちのためにと一生懸命に頑張ります。
しかし、パートの給与だけでは子どもたちとの生活を支えるには限界があります。
養育費も滞り、パートの時間を延ばして頑張って、くたくたになって家に帰ると子どもたちが待っています。
そんな子どもたちのために頑張るのですが、一向に生活は楽になりません。
周りに頼れる身内はいない、友達にも打ち明けることはできないとなると精神的に追い詰められてしまいます。
子どもを虐待してしまうお母さんは自分でもわからないうちに、気が付くとこどもに手を挙げてしまうということを繰り返してしまいます。ここから児童虐待が始まります。