みらいブログ

オンライン里親支援学生特別インタビュー『「遠い親戚みたいな存在」——支えられた学生が語るオンライン里親の力』

2025年09月24日

オンライン里親支援学生特別インタビュー

『「遠い親戚みたいな存在」——支えられた学生が語るオンライン里親の力』

 

いつもオンライン里親プロジェクトについてお伝えしている水曜日の投稿ですが、今回は超特別編です!

実際に支援を受けていた学生さんご本人へのロングインタビューをお届けします。

支援を受けた学生自身の言葉で、体験や想いを語っていただける、まさに貴重なインタビューです。

ぜひご一読ください!

***

 

2025年3月、短大を卒業した萩原友樹さん(仮名)。
0歳で乳児院に入所して以来、ずっと児童養護施設で暮らしてきました。高校卒業後は措置延長で施設に在籍しながら、児童養護施設の先生になることを志し、短大へ進学。その2年間、オンライン里親プロジェクトを通じて、オンライン里親さんたちからの支援と交流を受けてきました。

 

卒業を目前にした2月には、オンラインで交流を続けてきた里親さんたちと東京で初めて顔を合わせ、オンライン里親卒業式にも参加されました。

 

今回は特別インタビューとして、オンライン里親プロジェクト担当の本部スタッフ田村を聞き手に、卒業を前にした友樹さんが語ってくれた「小さな夢」、施設で暮らしていた当時のこと、これから児童養護施設の先生として働くことへの思い、そしてオンライン里親プロジェクトへ参加された率直な感想をお届けします。

 

***

 

児童養護施設では叶わなかった、“小さな夢”とは?

―まずはちょっと早いけど卒業おめでとう!2年間本当によく頑張ったね。これから施設を出て社会人生活が始まるわけだけど、何かやってみたいことはありますか?

友樹さん:
「いや、あの、ちょっと1個いいですか?……犬、飼いたいんすよね。」

――え、犬!?

友樹さん:
「はい。厳しいのはわかってるんですけど。施設にいる間は無理だったし、でも、もう自分の人生やし、生活やし、責任は自分にあるんで。元々、動物が大好きなんです。」

――昔から好きだったんですか?

友樹さん:
「めっちゃ好きで。中学・高校時代、遊びに行くって言ったらペットショップ。場所によっては抱っこさせてもらえるじゃないですか。あれで癒されてましたね。」

――そんなに好きなんですね。仕事にしようとは考えなかった?

友樹さん:
「中学の職業体験でもペットショップ行きました。でも職にするほどじゃなくて。趣味とか生活の中で関わりたい、って感じです。」

――施設ではできなかったことを、これから叶えたいと。

友樹さん:
「そうです。施設では犬を飼うなんてできなかった。だから、犬と過ごすっていうのが“軽い小さな夢”なんです。春から児童養護施設の先生になるんで、夜勤もあるんですが、付き合っている彼女も犬好きで、一緒に面倒見てくれるって言ってくれてるし。」

――なるほど。

友樹さん:
「だから、今までできなかったことを、これからの生活で一つずつ叶えていきたいですね。」

 

「本当は4年制大学に行きたかったけど――進路を決めるまでの葛藤」

――素敵な夢ですね。友樹さんは春から児童養護施設の先生に内定されていますが、そもそも保育士の資格を取るために進学をしよう、を決めたとき、どんなことで悩みましたか?

友樹さん:
「本当に直前まで消防士とか自衛隊とか、公務員系を考えてたんです。消防士はかっこいいし、子どもの頃から人を助ける仕事っていうのに憧れて。でも自衛隊は、自分の希望というより“安定してるし向いてるんじゃないか”って施設の先生に言われて考えただけで。どっちも“なれたらいいな”ぐらいでした。」

――そこから保育士に方向転換したのは?

友樹さん:
「やっぱり“子どもと関わる仕事がしたい”って気持ちが強かったんです。子どもは可愛いなと思うし、自分が施設で育ってきて、支援される側の気持ちを知ってる。それって絶対に強みになると思ったんです。だから“普通の保育園”じゃなくて、“施設で働きたい”って思ったんです。」

――なるほど。ただ、ずっと児童養護施設で育ち、また働くことになるのに抵抗はなかったですか?

友樹さん:
「いや、正直ありますよ(笑)。生まれてから暮らしてきたのも施設、働くのも施設って…どうなんやろって思う部分はあります。でも無理やったら無理で、その時は違う道を探せばいいかなって。資格があれば一般の保育園とかでも働けますし。そういう意味では保育士は強いなって思ってます。」

――進学先は短大を選んだんですよね。

友樹さん:
「はい。本当は4大に行きたかったんですけど、高校の時に自分で学費を調べたら“これは厳しいな”って。短大なら半分で済むし、奨学金で何とか賄えると思って。だから近場の短大を選びました。」

――高校の時から学費のことを考えていたんですね。きっと「お金あれば…だったのに」みたいに思ったこともありましたよね。

友樹さん:
「はい。それはもちろんありましたよ。でも、もう割り切ってました。仕方ないなって。」

 

児童養護施設にいる子たちは、みんなどこかで「こんなところにいたくない」という気持ちがあると思う

 

――高校のときから、お金のことも「仕方ない」と割り切っていた、それってすごい強さだと思うんですけど、だんだんそういう性格になったんですか?それとも、ある瞬間に「ああ、しょうがないな」って折り合いをつけた感じなんですか?

友樹さん:
「うん。多分それだと思います。あの……施設に長くいた人なら、みんなそうだと思うんですけど、みんなどこかで、“こんなとこおりたくねえ”って気持ちだし、“早く迎えこんかな”とか、絶対思うんですよ。特に最初は。まあ、その、親が嫌で来た人もいると思うんですけどね。でも、何十年も出られないなら……“仕方ねえな”ってなるんじゃないですかね。」

――自分の気持ちの置き場を、考えるようになるんでしょうか。

友樹さん:
「そう、そんな感じです。いつ変わったのか、自分でもよくわからないですけど。いつの間にか、そうなってました。」

――でも、周りを見ると、それがうまくできない子もいたりする?

友樹さん:
「ああ、まあいるっちゃいると思います。でも俺の場合は0歳からずっといたから、物心ついた頃にはもう施設におったんですよね。だから、自然と慣れていけた。でも、中学とか高校で施設に来る子もいるんですよ。その子らはすごいなって思います。だって、10年以上“普通の家”で過ごしてきて、それから施設に来るわけで。納得いかんのも当然やなって。慣れる時間がないまま、すぐ社会人になっていくんですよ。きついと思うし、ほんとすごいなって思いますね。」

――そんなふうに周りの子を見られるのも、友樹くんのすごいところですよね。ありがとう。聞きづらいことも聞いちゃってごめんね。

友樹さん:
「全然大丈夫です。はい。」

 

 

「子ども時代の経験を生かして――観察と距離感で寄り添う、施設の先生になる友樹さんの想い」

 

――新生活に向けて、今まで児童養護施設の子ども側、すなわち“支援される側”だったのが、先生側=“支援する側”へ立場が変わることについてはどう思いますか?

友樹さん:
「ま、不思議な感覚ではありますけど、楽しみですね、ちょっと。」

――どういうところが楽しみですか?

友樹さん:
「総合的に…総合的に楽しみですけど。どんな子がいて、その子にどう対応しようかなっていう。いや、なんかわからんですね、何が楽しみかって言われると。」

――人生のステージがひとつ変わる感じですよね。

友樹さん:
「はい。」

――自分だからこそ子どもに寄り添える、という感覚はありますか?

友樹さん:
「いや、あると思いますよ、それは。」

――施設の子どもたちは、先生にどんなことを求めていると思いますか?

友樹さん:
「うーん、適切な距離感かなって。子どもってわがままなんで、もっと近くにいてほしい時とか、ちょっと離れていてほしい時とか、絶対ありますよね。それを見極めて寄り添えたらなと思ってます。」

――それってでも、すごく難しそうですよね…。どうやってやるんですか?

友樹さん:
「いや、むずいですよ。それは…とりあえず観察するのがいいんじゃないですかね。ジャブ打つみたいにちょっと近づいて話してみる。うまくいけば続けるし、ダメそうだったら深追いせずに離れるみたいな。」

――自分もそういう風にしてほしかったですか?

友樹さん:
「うん、中学校1年ぐらいまでは人懐こかったんですけど、そのあとめっちゃ大人を見て、選ぶようになったんですかね。嫌だなと思った人にはもう全然話さないし、冷たくしてました。」

――なるほど。何をもって「嫌」と判断してたんですか?

友樹さん:
「先生の中にも、子どもによって甘やかす人、厳しくする人がいるんですよ。そういう人は向いてないなと思って、逆に自分が冷たくすることで気づかせようとしたこともありました。」

――中学生だと、そういう対応になってしまうこともあるかもしれないですね。高校生になると対応は変わったんですね。

友樹さん:
「そうですね。そこまで露骨ではなく、対応は柔らかくなりました。」

 

「距離があるからこそ話せる」――オンライン里親さん達との交流を振り返る」

――最初にオンライン里親に参加しようと思ったきっかけって、どんな感じだったんですか?

友樹さん:
「退所後支援担当の先生が、“そういう制度あるよ”って教えてくれたんです。で、とりあえず応募だけしてみようかなって。受けて悪いことはないしって思って、最初はそんな感じでした。」

――そうだったんですね。普通の奨学金ってお金だけですけど、このオンライン里親プロジェクトは“お金+人とのつながり”ですよね。その仕組みについてはどう思いましたか?

友樹さん:
「いや、でも“里親”って名前がついてたんで。顔も中身も知らん人からお金もらうって、やっぱちょっと違うかなって思ったんですよ。だからオンラインで交流があるのは自然かなって。びっくりとかはなかったです。」

――さすが、考え方しっかりしてるよね。施設に長くいた経験が大きいんでしょうか?

友樹さん:
「うん、それはあると思います。施設で育ったから、里親制度とか社会的養護については一般家庭の子より詳しいと思います。」

――実際にオンライン里親さん達とオンラインで会うとき、緊張しなかったですか?

友樹さん:
「いや、めちゃめちゃ緊張しましたよ。どんな人かなって。それに、1対1ならまだしも、複数人だったんで。ちゃんと話せるかなって心配でしたね。」

 

――でも高校時代はコロナ禍で、Zoomの経験もあったので、オンライン交流については慣れてはいましたか?

友樹さん:
「そうですね。高校の最初の1~2か月はずっとオンラインで、みんなの顔がPC画面に並んでて。まあ多少は慣れてたけど、それでもやっぱり緊張しました。」

――なるほど。じゃあ実際にオンラインで交流してみて、里親さんってどんな存在でした?施設の先生方とどう違いましたか?

友樹さん:
「施設の先生は“友達感覚”で、何でも話せる存在。オンライン里親さんは……遠い親戚って感じですかね。会う機会は多くないけど、会えばちゃんと話せる。しかも、オンライン里親さんだったら言えることもあると思うんです。たとえば恋愛のこととか。施設の先生だと距離感が近すぎて、からかわれるのが嫌って子もいると思うんで。オンライン里親さんはちょうどいい距離感で、応援してくれる存在だと思います。」

 

――それはすごく大事なことですね。印象的だったエピソードってありますか?

 

友樹さん:
「一番印象に残ってるのは、やっぱり先週“実際に会えたこと”ですね。

*友樹さんはインタビュー前週に東京でオンライン里親さんと初めてリアルで対面し、卒業のお祝いをしてもらいました。

初めての東京で、初飛行機で、初めての体験もいっぱいさせてもらいましたし。シュウさん(オンライン里親さんのニックネーム)がめちゃくちゃ持久力があって、ずっと元気にスタスタ歩かれてたのにもびっくりしました(笑)。

 

 

 

あとはオンライン里親さん達が海外経験豊富で、色んな国の話を聞けたのも驚きでした。自分、海外行ったことないんで。“すごいな”って思いました。」

 

――そういう話を聞いて、自分も海外に行ってみたいと思った?

 

友樹さん:
「それはもともと行ってみたいと思ってたんで。実際、パスポートも申請しました。卒業旅行で韓国に行けたらいいなって思ってます。」

 

――いいね!じゃあ、2ヶ月に一回ペースの定期的な交流会は一旦終わりですけど、そのことについては?

友樹さん:
「うーん……“ああ、終わりか”って、寂しくなるんじゃないですかね。今はまだ実感ないですけど。交流会って毎回あっという間で、誰がいるかなって楽しみにしながら始まって、気づいたら1時間終わってる感じでした。だからすごく濃い時間だったと思います。」


「支援を受けながら自分を振り返る――オンライン里親が育んだ成長の時間」

――オンライン里親プロジェクトに参加して、不安が和らいだことってありましたか?

友樹さん:
「うん、ありましたね。まずはお金の面は大きかったです。

でもそれと同じくらい“自分を振り返る機会”を持てたことも大きかったです。もしこの制度がなかったら、近況報告とか、自分の生活を改めて見直す機会なんてなかなかないじゃないですか。だから“ああ、こういうことあったな”って振り返って、それを里親さんに打ち明けられる時間ができた。自分にとって、ちょっとしたメンタルケアになってたと思います。」

――そうなんですね!毎月の報告書なんかも、友樹くんにとって自分を振り返り、整理する時間になってたんですね。じゃあ、他の学生さんにもこの制度を勧めたいと思いますか?

友樹さん:
「絶対した方がいいと思います。自分が知らない世界を持ってる人たちと話せるっていうのは、すごくいい経験だと思うんです。みなさん面白い話を持ってるし、支援もありがたいし……正直デメリットはないです。」

――でも正直、他の奨学金制度だったら報告書も書かなくてもいいし、面談もないですよね。面倒だなあと思ったことは?

友樹さん:
「いや、それは全然なかったです。1か月もあれば何かしら出来事はあるんで、それを文字にして写真つけて。別に苦じゃなかったですね。それで支援いただけるなら、すごくありがたいと思ってました。」

 

 

――そう言ってくれてよかったです。じゃあ今後社会に出ても、オンライン里親さんとの関わりは続けたいと思いますか?

友樹さん:
「はい。毎日話すわけじゃなくても、何かあった時に頼れる親戚みたいな存在でいてほしいと思ってます。小さなことでも相談できる関係でいられたら、心強いですね。」

――ありがとうございます。最後に事務連絡ですが……毎月の支援金って、一部は貯金してるの覚えてる?3月末に振り込む予定なので、また連絡しますね。

友樹さん:
「え、そうなんですか!すっかり忘れてました!犬を買う時に使うかもしれないですけど……」

――いやいや(笑)。まずは生活に慣れることからやで。オンライン里親さん達に感謝ですね。大事に使ってね。とにかく身体に気をつけて、これからの新生活をオンライン里親さん達とともに応援しています!

 

 

***

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この記事を書いた人

田村 彩水
田村 彩水
滋賀県出身。2023年よりみらいこども財団経営企画室(本部)入社。
企業ドネーション、オンライン里親プロジェクト、広報・SNS担当。
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