◇施設での生活
施設は環境的には良くも悪くもという感じでした。今病院で介護の仕事をしていたり、医療人として人と接する仕事をしていると、当時の職員に対してあの人達すごいんだと感じて、この年になったから、こういう勉強もしているから改めて感謝できるという感じです。
施設を出た直後はあんなところ子供の心のケアとかも何もできてないじゃないかという不満がありました。
11才の時に入ったので、多感な時期じゃないですか。学校での人間関係も複雑化してくる年齢で。施設に入ることで学校も変わるからまた新しい友達の関係ということで、人付き合いというか、もともとできあがった人間関係に入るのがすごく苦手だったので悩んでいました。
それに加えて、施設も集団生活で。自分の時間もなくて、トラブルも多かったです。怖い高校生とかに意味もなく殴られて、職員に言っても「あなたたちが悪かったんじゃないの?」と話なんか聞いてもらえなくて、なんでなんだよって思ってました。なんでこんな理不尽なところで、暴力なんてだめなのに、母からの暴力から逃れられたのに、なんでそんな年上の人に意味もわからなく殴られなきゃならないのとか、腹立つ感じが、悲しみといらだちみたいなのがすごかったです。
でも今思えば、職員も少なくて、割と1年に1人はうつ病とかになって辞めていってしまう環境で。突然職員が来なくなって、先生なんで仕事こなくなっちゃったんだろう、とか結構あって。あとから体調崩してやめたんだよとか、しばらくすると実はあの人うつ病だったとかがわかるんです。そうやって職員が大変でやめていってしまう。4人新入職員が入っても1年もたたないうちに1人とかになってしまうんです。職員のメンタル的なサポートもなく、肉体的にも休憩とかもほとんどない長時間労働で頑張っていて、子供と接するのもすごく体力がいると思うので、その中でこどもの心のケアっていうのは無理だと思うし、中高生に殴られたというのも相手できないよなって。今はどうなっているかわからないけど当時はそんな感じでした。
施設にいる他の子も私と同じような気持ちで入っていて、問題行動を起こす子も多かったです。理不尽に殴ってくる中高生も私と年の近い子もそうなんですけど、上の人にされていたから自分も同じ事をやるというので、伝承されていってしまうんです。本当はあっちゃいけないことだと思うし、私は極力そういうことをしないようにと思っていたけど、それでも年下の子にいらついたりすると手がでちゃうことはありました。怒り方がわからないから、自分が親になぐられてきたから、やってしまって。あの頃はすごくつらかったです。まともな親の元に生まれてこなかったということと、まともな親の元で育たなかったら、こんな生活しかないんだ、こんなつらい環境で生きていくしかないんだとか、そういうのはありました。
(③へつづく)
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